森田剛主演舞台『ブエノスアイレス午前零時』
森田剛さん主演舞台『ブエノスアイレス午前零時』を観た感想を書かなければならない。(使命)
1年で2つも彼の舞台が観れるなんてこんな幸せなことあるかよーーー!!!!(大の字)
というわけで、2014年は舞台役者・森田剛のファンになった1年でもありました。
大阪27日のチケットしか確保していなかったというのに、「これ絶対1回だけじゃ後悔する…!」と勢いに任せて29日大千秋楽公演まで行った。行けてよかった。
やっぱり私は森田剛さんの舞台が世界で一番好きです。
彼の舞台を観るのはこれで2作品目というぺーぺーだが、逆に言えば彼の舞台を2作品も観れていることが嬉しいし、これからやる舞台も必ず観に行きたいと思う。
森田剛初めての1人2役、タンゴを披露ということで話題になったこの作品。原作は藤沢周著書の同名小説。
原作は読んでいないので、原作を絡めた感想は書けません。スマン。
日本とブエノスアイレスの情景が交差し、2人の青年・カザマとニコラス(森田剛)が盲目の老嬢・マリア(原田美枝子)と若い女・ミツコ(瀧本美織)と恋に落ちるラブストーリー。
主軸はどちらかというとニコラスとミツコのターン(ブエノスアイレス)だったかな。
小川のほとりで温泉卵をゆでる男・カザマのシーンからこの舞台は始まります。
そもそも演出家の行定勲さんは、この作品は最初映画にしたいと考えていたそうで、この温泉卵をゆでている男の佇まいで、挫折して田舎に帰ってきたやるせなさや郷愁が滲めば、それだけで映画として成立すると思っていた、という話をしています。
森田さんの舞台を行定さんが観に行き、終演後に話をする機会がここ数年続き、森田さんから舞台を一緒にやりたいと持ちかけたことから、この舞台は始まっています。
森田「僕が出演していた舞台を観に来てくださったときにご挨拶させていただいて。そのとき、行定さんの次の舞台のお話を聞いて。“あ、舞台もやるんだ”って知ったんですよ。映画監督のイメージが強かったので。行定勲さんという方自体に興味があったこともあって、お仕事ご一緒したいなと思ってたんですよね。僕から言いました。結構、とんとん拍子だったんですよ。行定さんがすぐに、“だったらこういう作品どう?”って提案してくれたのが今回の作品で。話が進むのがすごく早かった。いろいろとタイミングもよかったんだと思います」(雑誌『BEST STAGE』2014/9/Vol.72)
行定「森田くんで舞台をやることを考えたとき、この作品が再び浮かび上がってきたんです。ハードボイルドな世界にいる森田剛を想像したとき、彼にはそういう世界が似合うんじゃないかと思えた。舞台でこれをやろうとしたきっかけは森田くんなんです。森田くんは、いい意味で表面とうちに秘めたものに落差を感じさせてくれる。どこかに怖い部分を持っていて、彼にカザマを演じてもらえれば、『ブエノスアイレス午前零時』の世界が、舞台でも成立させられるんじゃないかと思ったんですよ」(『ブエノスアイレス午前零時』パンフレット)
森田「こういう作品があるよと今回のお話をいただいたときには、自分も恋愛というテーマに興味のあるタイミングだったし、若い男と盲目の老嬢という設定もいいなと思いました。これなら恋愛ものでも恥ずかしくないなと(笑)。あと、自分のやってみたいことの中に、すごく年下の女の子との恋愛、というイメージがあったりもしたんです。だから、その両方がこの作品でかなったし、現代と過去で違う恋愛を演じられるのが贅沢だなと思いました」(『ブエノスアイレス午前零時』パンフレット)
温泉卵をゆでるカザマ(森田剛)のもとにやってくる盲目の老嬢・マリア(原田美枝子)。そっとカザマの顔に触れ、「あなた、笑わないのね。そうね、ブエノスアイレスの男は笑わないのよね」
場所は切り替わり、温泉旅館「みのやホテル」をモップで掃除するカザマ。ダンスホールがあることぐらいしか売りのないこのさびれたホテルでは、社交ダンスツアーの受け入れに力を入れていて、男の従業員は女性客の相手ができるようにダンスの練習を奨励されていた。そんな空気に馴染めないカザマは周りとの距離を縮めようとせず、ただ温泉卵をゆで、館内の掃除をしてやり過ごす。仕事に失敗して田舎に帰ってきた、影のある青年。
兄のキクオ(千葉哲也)がホテルにやってきて、嫌がるカザマ。
ホテルにやってきた盲目の老婆・マリア「温泉の匂い…硫黄の匂い…マッチの匂い……いるのね!?ニコラス!」
ある歌を歌いながらそっと手を伸ばすマリアに思わず手を重ねるカザマ。
「…ニコラス、ようやく会えたのね。私、おばあちゃんになったでしょ?」
「あなたはまるで黒い太陽だった」
「覚えてるでしょ?ミッドナイトブルーの世界。聞こえるでしょ?カンジェンゲの音。みだらな音。あの酒場。ボカの港…」
カザマはマリアの幻想のような話に次第に引き込まれる。
「ニコラス!客が呼んでる!」
ホテルの従業員用のハッピを脱がされてセットも一転。「ニコラス!」と名前を呼ばれるカザマ。この一瞬で役を切り替える森田剛の尋常じゃない強さ。
この舞台、ほとんどの役者が日本とブエノスアイレスの2つの場面で1人2役を演じているんだけど、森田さんの2役に関してはだんだんカザマの中にニコラスが入り込んでいって最後にはほぼ同一化してしまうので、そこまで演じ分けは考えていなかったそうだが、それでも一瞬で森田さんが纏う空気が変わった。たぶん重心が違うんだと思う。いや知らんけど。でもそんな気がした。姿勢が違う。目が違う。空気が違う。その違いを重心で変える男・森田剛にゾクゾクした。私はまた凄い舞台を観ているのだと思った。
ブエノスアイレスの酒場。娼婦が集う店。男に金を床にばらまかれて、それを拾うニコラス。
「ちょっと待って、足りない」
のらりと立ち上がって客の男に詰め寄るニコラス。この一瞬!この一言!カザマがニコラスに変わった瞬間!ゾクゾクした…!!
金は払ったとシラを切る男に、「目、鼻、耳、指、どれにします?500ペソのかわり。まぁどれもないと不便だと思いますけど」
ここの森田さんが毎度ものすごく怖くてさ。「目、鼻、耳、指、どれにします?」って。あのドスの効いた声で言われたらちょっとちびるよね。
女が「ニコラス!あの東洋人いつまで置いとくつもり!?あんたが拾ってきたんだからどうにかしてよ!」と怒りながらフロアに入ってくる。遠くから「さわるな!」という若い女の叫び声。バタンッと扉が開いて羽交い絞めにされたミツコ(瀧本美織)が入ってくる。
「さわるな!娼婦じゃねぇから!娼婦じゃねぇから!!」
「お客さん、すみません。こいつ、商品じゃないんで」
ニコラス抱いてーーーーーー!!!!!!(早い)
もうこの瞬間に悟ったよね。瞬殺だったよね。これは森田剛がかっこよくてたまらない舞台だ、と。アホの感想。
まだボスのマルコーニ(橋本じゅん)に面通ししていないから、店の娼婦にはできない、それはボスが決めることです、と言うニコラスに、娼婦以外の道はねぇよと口々に罵る客。ここでマルコーニ夫人・エマ(松永玲子)が「この女は今日がデビュー!私が許しましょう。景気よく抱いてやってくださいよ!」と言い、客にその場に押し倒されるミツコ。ミツコをかばおうとして何度も殴られ蹴られるニコラス。
「ニコラスどういうつもり?この東洋人を守ってるの?」
「そうじゃないです。仕事なんで」
ニコラスがかっこよすぎて泣く。
そこへマルコーニがやってきて、ミツコに問う。
「死にたいか、死にたくないか」
「…しにたくない」
それを聞いて、ミツコを娼婦にする!俺のために金を稼げ!と宣言するも、ふとミツコに「お前何か特技はあんのか」と聞く。
「おい…」お前にはあれがあるだろう、と言うかのようにミツコを促すニコラス。ミツコは歌を歌います。
ミツコの歌を聞いて心が変わったマルコーニ。下手だ、歌手にはなれねぇ、と言い捨てた直後、「突然ですが、お前は俺の女になってもらいます!お前抱けんのは俺だけだ、いいな!」と堂々宣言。
マジかよ!!!!
去っていくマルコーニ。マルコーニ夫人のエマ、激おこ。「今日は店を閉めます!帰ってください!」そしてニコラスを見据えて一言、「あんたえらいの拾ってくれたね」そりゃあ旦那が急にわけのわからん若い女を俺の女にする宣言したら激おこですわ。エマめっちゃ不憫。
客も去り、エマも去り、フロアに2人残されるニコラスとミツコ。
呆然とするミツコに話しかけるニコラス「すげーよ。いきなりボスの女になったよ。ボスのオンナ、わかる?ボスはいい人だし、自由にやれる。上だよ、上。頂点!なんでも思うようになる」
どうやら納得していない様子のミツコ。
「べつに娼婦でよかった」
「娼婦がどれだけキツイか、あんた知らないんだよ」
酒瓶を煽り、不服そうなミツコ。
「どした?…嫌か?」
「ううん」
「もう軽口きけない立場の人になっちゃったなぁ、あんた」
せ、せつねぇ……。もうすでに切ないメーターぶった切ってる…。
そうだ!ボスの女だ!と胸を張って笑うミツコに、ニコラスも笑う。
ここでポケットから花札を取り出してニコラスに見せるミツコ「勝負だ!」
「好きだねぇ、あんた」
ふ、と小さく笑って、モップを傍に置き、床にあぐらをかいてミツコに向かい合うニコラス。笑うミツコ。
「今までの金だって全部返してもらうんだから」
「ボスの女なんだからそんなはした金気にすんなよ」
花札を目の前にかざして、ニコラスが一言呟く。
ここすごく好きだった。
「――きれいだ」
ニコラーーーーーーーーーーーース!!!!(絶叫)
花札のことかもしれない。でも私を見てた。あの時が一番幸せだった。というミツコの心の声。
ニコラスのやることがいちいちずるい。
「行くよ」とミツコが女に呼ばれ、花札を片付ける2人。去る前にミツコは、その花札をニコラスに差し出す。
「何だよ。大事なもんだろ」
「上で、まってる。いつか、勝負!」
「お預かりします」と頭を下げて花札を受け取るニコラス。
ここの「お預かりします」って一礼もすごく好きだったんだよね。かっこいいんだよ、ニコラス。何回言うんだって感じだけど、かっこいいんだよニコラス。
再びモップを手にした瞬間、場面は温泉旅館に戻ります。一瞬でカザマの重心になる森田さんに痺れる。
ダンスパーティーの支払い金30万円がなくなった疑いをかけられるカザマ。
そして場面はブエノスアイレスへ。
踊り子として、マルコーニの女として、美しく立派に成長したミツコ。ニコラスはただそのそばで変わらず下っ端として働いていた。
ミツコがどんなに魅力的な女が朗々と語るマルコーニ「そんなミツコを抱けるのは誰だぁ!?」付き人「ボスです」マルコーニ「よし、正解。第2問!」
第2問(笑)クイズだったんだ(笑)ってここ凄くツボに入った。マルコーニがおバカボスでちょっとかわいいんだよね。
マルコーニが去り、ミツコに詰め寄る店の女たち。調子に乗んなよ、ボスの女だろうがあんたはここでは一番下なんだからな、という女のいびり。あるある。
「シーツ!お酒!男!お金!」とミツコに詰め寄る女たちに、「それ全部俺の仕事じゃないですか。俺の仕事取らないでくださいよ」とニコラス。
嗚呼、ニコラス。抱いてくれ。
やけにミツコのことかばうよね、ミツコに惚れてんじゃないの、店の女・リンダ(万里紗)に手を出したくせに、とやいのやいの言われるニコラス。
リンダに手は出してない!とニコラス。どうやらリンダの一方的なニコラスへの片想いがからかいの標的に。
客の男がリンダを指して、床に金をばらまいてニコラスに言う。「拾え、その女(リンダ)買うから」
「やめてニコラス、拾わないで。私何されるかわかんない」と涙ながらに訴えるリンダを無視して、淡々と金を拾うニコラス。
ニコラスってミツコのことだけを守ろうとする男だよね、と思った。決して誰にでも優しいわけではない。ただ、ミツコが絡むと何を失っても恐れないような強さを発揮する。愛する女のためだったら他の女なんかすぐ切り捨てるような。
ミツコだったかマリアだったかどっちかが、ニコラスだったかカザマのことを「優しい。あまりにも優しい」って言うシーンがあった気がするんだけど(うろ覚えで喋りすぎてる)(そんなシーンなかったらごめん)、ミツコにとって、マリアにとって優しいというだけで根本は他者に冷たいような気がした。ニコラスもカザマも。
金を拾う手を男に踏まれるニコラス。
ミツコが立ち上がり、男に酒をぶっかける。
「弱い犬ほどよく吠える」
「ボスの女だからじゃない!あんたが私より弱いのがわかるから強気なんだ!」
ミツコマジ超男前ーーーーー!!抱いてーーーー!!
何もなかったことにしようと言うフアン(千葉哲也)だったが、「何もなかったでは済まされないんですよ」とカウンターの上に飛び乗ったニコラスの手にはナイフ。「こいつは俺を馬鹿にしたんだ!」とナイフを男に向ける。男と乱闘になるも、逆にナイフを取られて腕ぶっ刺されるニコラス。(ちょっとダサい)
そばに寄ってニコラスを起こし、スカートを破いて腕を止血するミツコ。目で男を威嚇するミツコ。超絶男前。
ナイフを拾ってニコラスに渡す。このシーンが、花札を渡すときのシーンと一緒でさ。ニコラスへのミツコの立ち位置はあの花札のときとこのときと、全く変わっていなかったんだな、って。
ニコラスがかっこよかったのはそうなんだけど、なんていうか思い返せば思い返すほどミツコのほうが男前なんじゃ…?って答えに至るから困る。ていうかたぶんミツコのほうが圧倒的に男前だった。
「お前、ミツコに惚れてんのか」とフアン。
答えないが、否定もしないニコラス。
「フアンさん!俺、あなたみたいになりたいです。もっと上に行きたいんです!命を思いっきり使えれば何だっていいんです!上に行きたい、上に行きたいんです!」
「ミツコか?」
「…違います」
上に行きたい、と。野心に燃えるニコラスはやっぱりすごく真っ直ぐな男でさ。本来のニコラスはもっとがむしゃらに生きたいんだろうなぁ。ミツコと出会って変わった人生は、ニコラスにとってよかったのかな、とかちょっと思った。愛は人生を狂わせる。
場面は温泉旅館に戻る。カザマが従業員を殴る。30万円を取ったと疑いをかけられたことにキレたカザマ。「いわれのない難癖つけられるのはごめんなんですよォ!」と声を荒げる。
カザマもニコラスも、プライドが傷つけられてブチキレるところなんかは熱く男臭い。
カザマってそんなに我を前に出すような人じゃなかったのに、ニコラスの話が進むにつれて語尾もだんだん強くなっていってて。ああ、カザマとニコラスが混ざり始めているんだ、って。それでもカザマとニコラスが別人だとわかるのは、やっぱり森田剛の半端じゃない器用さだよね。重心で役を切り替えてる。
白地に赤とピンクの花柄のドレスを身にまとったミツコが登場し、また場面はブエノスアイレスへ。
深夜のフロアにミツコとニコラスの2人っきり。
「ねぇどう思う?このドレス」
「似合ってると思いますよ」
「その話し方やめて!この時間はやめて。命令してんの!」
ニコラスはふいに動きを止め、また床を掃除し始める。
「最近ここに来すぎ。やめろ」
ここが!!!!その話し方やめてって言われてからのこの砕けた話し方に戻すニコラスが!!!!(即死)
「どうして?」
「こんな時間に俺と2人っきりでいたことがボスに知られたらまずい」
掃除をやめて、カウンターの椅子に座って片足を軽く立ててタバコを吸うニコラス。ヒィ…ッ!タバコ吸ってるシルエットがかっこよすぎて2回観て2回とも双眼鏡でガン見した。アホな見方しててゴメン。
タバコを取り上げるミツコ「ほら、ワルツだよ」とドレスを広げて見せる。「ん」って両手を広げてニコラスを誘うミツコがめちゃくちゃ可愛い。ミツコが、っていうか美織ちゃんがめちゃくちゃ可愛い。
「苦手なんだよ」嫌がるニコラスに「そんなことない!」
ミツコとワルツを踊るも、グダグダでリードも何も出来ないニコラス。
「へたくそ!」
「だから言ったろ!」
「形じゃないよ!私と踊ってんだ。わかる?」
ニコラスをぎゅっと抱きしめるミツコ。
「いつか生まれた国に帰りたい。どんなところか見てみたい」
「花札の国はきれいな国に決まってる」
耳元で会話をする2人。
ふいにミツコから離れ、そばにあったソファに座るニコラス。
「何で俺に優しくするんだよ」
「あの日助けてくれた」
「店の前で倒れてたから拾っただけだ」
「その日じゃない!」
ミツコの言っていることがわからないニコラス。
ニコラスの隣に座るミツコ。
「私たちは似てるな」
「似てねーよ」
「どこにも行けない」
「そんなことねーよ」
ニコラスにキスをするミツコ。(たぶん寸止め)
ミツコの顔が離れた瞬間、スッと顔を背けるニコラス。
「…こわい?」
「ボスの女だ」
「そうか」
「すまなかったね」と立ち上がり去ろうとするミツコ。追いかけて振り向かせ、強く抱きしめるニコラス。
ここでマルコーニの陽気な歌声が外から聞こえてくる。どうしてこんな時間に!?と慌てるミツコに、「いいからそこに隠れろ!」とカウンターの机の影にミツコを隠すニコラス。
マルコーニ「聞きたいことがある。お前に。答えてくれ!…渦の巻き方は北半球と南半球で違うらしいな」
ニコラス「はぁ…」
マルコーニ「じゃあ赤道直下は?どうなんの?教えて。3日前から気になってしかたねーんだよ」
マルコーニがおバカボスでかわいい…!!(笑)
物音がしてミツコがいることがバレる。(お約束)
「ボス違います、違うんです!何もしてません。たまたまです」と必死に言い募るけどニコラスそれ墓穴やでぇ…。
ニコラスを殺そうとするマルコーニに、「いいんですよもう、好きにしてくれ」とやけになるニコラス。
「お前はどうするんだ」とマルコーニに言われ、ミツコ「…殺して、私も。ここで殺してください」ニコラス「何言ってんだよ!」
ミツコに馬乗りになったマルコーニからミツコを助けて殴り合いになるニコラスとマルコーニ。…と、マルコーニを後ろからビンで頭ぶっ叩いて倒れさせるミツコ。…のところへ登場するフアン。…と、血まみれになったマルコーニがのらりと立ち上がり、まさかの死んでなかったパターン。…と、そのマルコーニをナイフで一刺しして殺したフアン。展開が急に怒涛。
警察に行く、と言うミツコを止めるニコラス「だめだ。あんたのせいじゃない。ここですよ。だってここしかないでしょ、俺が行くところ。今なんだか最高の気分なんです」と笑い出すニコラス。ここの狂気はさすが森田剛だったな。気味悪くて震えた。
「必ず出してやる」とフアン。ニコラスをただ抱きしめるミツコ。
場面は切り替わり、店の前でミツコが倒れているシーンへ。
「言葉わかるか?親は?まだ子供じゃないか。ここ、危ない、帰れ。…本当に危ないんだよ。まだ向こうのブロックのほうがましだ」と、ミツコをどこか別の場所に行かそうとするも、ミツコは「ここで働きたい」の一点張り。ついに折れて、ミツコを拾うことにしたニコラス。
「お前、特技とかないのか。娼婦じゃない道があるかもしれない。ボスは歌が好きだ」
実はこれが二度目の再会だった。
場面は替り、ニコラスが刑務所から出てくる。あれから5年後の酒場へ。
ボス殺しの犯人だというのに5年で出てこられたのは、フアンが大金を積んだからだった。そしてミツコはフアンの女になっていた。
「フアンに会いたい」「フアンに仕事の一つでももらいにきただけだ」客にも女たちにも突っかかるような言い方をするニコラス。
「ミツコは?ミツコはどこだよ」
そんな女いたっけな、と笑う客たち。
「どういうことだよ」
「ニコラス聞いて。ミツコはいないの。でもいる」
「何言ってるかわかんねーよ!」
バン!と扉を開けて登場したミツコ。黒く長く艶やかな髪に、背中の大きく開いた妖艶な青いドレス。マリアという名前になったなったミツコは、フアンの女となり、娼婦となっていた。
変わりきったミツコを見て店の机を投げて荒れるニコラス。
ここの荒れるニコラスなんかちょっとたまんなかったよね。ミツコを守るために刑務所に入った。どうしてもミツコだけは娼婦にしたくなかったのに、自分がいない5年の間に娼婦になっていたミツコ。挙句の果てには「見かけない顔だね。出て行ってくれませんか」と吐き捨てられる。
「何してる」
低く、かすれた声。
「フアンにやらされてんのか。無理やりか」
「ここはもうフアンの街なんですよ!」私はマリアだ、フアンの女だ、とミツコ。
「噂で聞いたよ」
「私たち、愛し合ってんです」
「なのにフアンはお前にこんなことさせんのか!」
フアンと兄・キクオ(どちらも千葉哲也さん)が急に切り替わる。頭を抱えるカザマ。
そしてまたすぐにフアンに切り替わる。ブエノスアイレスと日本が交差する。
「ミツコはな、この街に来る前から娼婦だよ。何も知らないのはお前だけだ」
だんだんカザマの中にニコラスが入ってきて、混乱するカザマ。
客と踊るマリア。酒を浴びて荒れるニコラス。
「ミツコ、今日こそは俺と踊ってくれるんだろうな」
「俺を無視すんなよ」
「好きでこんなことやってねぇだろ」
「出るぞ、こんなところ」
マリアの手を引こうとするも、投げ飛ばされるニコラス。
っていうか本当にニコラス投げ飛ばされるシーン多すぎて、そのたびに森田さん軽々と床を転がるから、マジごうくん軽いな…って思ってた。アホの感想。
あとニコラス乱闘のシーンも多すぎて、どんどんシャツの胸元がはだけていくから、なんていうかもうすごい。色気が凄い。森田剛の尋常じゃない色気。オタクの感想。
店を締め出されて、店の前でニコラスは浮浪者に出会い、いろいろあって浮浪者を殴り殺して大金を奪います。ニコラスがクズ。
盲目の老嬢・マリアに、前にやっていた仕事のミスを吐露するカザマ。
ニコラスの話が混濁していくうちに、マリアに心を開き始める。マリアをダンスパーティーに誘うカザマ。
「この金でミツコを買う」と浮浪者から奪った大金を床に叩きつけるニコラス。
「俺がもらう。永遠に」
ニ、ニコラス……!!やっぱかっけーよ、ニコラス…!!
「今はっきりしてるのはこれだけだ。お前を国に帰したい、ミツコ」
「ミツコはお前が手に入れられる女じゃねーよ」とフアン。
「フアンさん、いいんだよ。手に入らなくても。欲しいものがわかる、それだけでいい」
この「欲しいものがわかる、それだけでいい」ってセリフがたまらなく好きだったーーー!!言い方がすごく穏やかなんだ。今まであれだけ荒れててちょっとダサかったのに(おい)、ここで急にかっこいいの。
1時間だけニコラスに買われてあげる、とマリア。2階へニコラスの手を引く。
2人っきりになって、マリアはミツコに戻る。
「何考えてるの、逃げて」
「話せよ」
「…何を」
「本当のことを」
ミツコの手首を掴んで「出よう」と一緒に逃げ出そうとするが、「私はここから出て行けない」としか言わずその場を動かないミツコ。
「…嘘だったのか、これ」ニコラスはぽけっとからミツコの花札を取り出す。
「花札の国が見たいって言った!俺も一緒に!って!!」
ここでまた声を荒げるんだよーー。もうちょっとたまらないよーー。
「私は大丈夫。もう救われてる」
「もう救われてるってどういうことだよ…」
「あなた覚えていないんだもの」と笑いながら、ニコラスとの初対面の話をするミツコ。
小さい時、船で身体を売っていた。船に乗り込んで来たニコラスをミツコは誘ったが、ニコラスは「まだ子どもじゃないか」とその誘いを断った。二度目の再会のときにも「まだ子どもじゃないか」と言い、ミツコを娼婦にはさせなかったニコラス。「あなたはちっとも変わっていなかった」と笑うミツコ。その日、ニコラスはトランプを一晩中してくれた。ミツコはお礼に花札をあげようとしたが、「大事なものだろ」と受け取らなかったニコラス。
「あなたを忘れたことはなかった。それから5年、船を飛び出して、あなたがいるという街に行った。店先で会ったのは偶然じゃない。初めてじゃない。船で出会ったときから、あなたを愛してる!」
ミツコの、っていうか美織ちゃんの、純粋な告白がすごくよかったの、ここ。
「だから早く逃げて」
「お前もだよ」
「私は行けない。ここを出て行けない。ニコラス、サン・ニコラス。あなたに会えてよかった」
「だめだ、連れてく。俺たちはあのフロアを越えていく。一緒に。…ミツコ、あんたは何がしたい人間なんだ」
ミツコの手を握る。ぐっと握り返すミツコ。
絞り出すような声で、「…こえる」と一言。ミツコの手を取って走り出すニコラス。
この一連のニコラスのセリフはちょっとほんとにたまらなかった。
ホテルのダンスパーティーと店のフロアの情景が入り混じる。
「カザマくん!」「ニコラス!」と叫ばれて、頭をかかえる。
ニコラスを釈放したのはミツコだという話をフアンに聞かされる。フアンがニコラスのために払った金はミツコが一生をかけてフアンのために働き続けなければならない、そういう約束になっているのだ、と。「やっぱり私、一緒には行けない」ニコラスの手を離すミツコ。
「あなたのために男と寝る。これからはあなたのために世界中の男と寝て、あなたのために金をつくる。そんな人生の方がよっぽどいい。だから大丈夫。私はもうあなたに救われてる」
老嬢・マリアがダンスパーティー会場で人とぶつかり、手に持っていた温泉卵が床にぶちまけられる。他の人の邪魔にならないようにしていなさいよ!と従業員に言われ、萎縮してしまうマリア。スッと床の温泉卵を片付けるカザマ。「大丈夫ですから。こんなのは掃除すればいいんだから」マリアを見上げ、優しく言う。「新しいの、お持ちしましょうか」
座り込んでカザマの頬にそっと触れるマリア。あんた目見えてるんじゃないか!と周囲がざわめく。
「見るべきものなんてある?…あなただけを見ていたいの」
座り込んだまま、マリアのことをそっと、でもきつく、抱きしめるカザマ。
そしてついにタンゴのシーン。
タンゴを踊るマリアとカザマ。ミツコとニコラス。
ごうくんのソロタンゴもちょっとあってさ。すげーさ、もうさ。
好きだよね。
森田剛を好きになるしかないよね。
だって森田剛のタンゴなんてかっこいいに決まってた。男性がリードするダンスって男性の方が背が高いほうが格好もつくしやりやすいだろうと思うんだけど、瀧本美織ちゃんがヒール履いたらごうくんの方が小さかったわけだが*1、それでも完全にごうくんかっこよすぎて意味わからんかったからな。
というわけで、ブエノスマジ最高でしたーーー!!
後半になるにつれてカザマとニコラスの切り替わるタイミングがどんどん早くなっていって、カザマの中にニコラスが入り込んでいく、あの疾走感。重い。すげー重いんだけど、駆け抜けていく愛。
美織ちゃんが本当にめちゃくちゃ可愛くてよ~~。美織ちゃんの透明感あるミツコが光った舞台でもあったと思う。
あの子めちゃくちゃ美人になったよな~。 「森田さんから優しさが滲み出ていて森田さんの顔を見るだけで泣けてくる」って美織可愛すぎるもんな~~。あんな可愛い子にそんなこと言われたらそりゃあごうつんもグフフ笑いで「やりづれぇよ(笑)」ってなるよな~~。*2
あとごうくん今年年男だけど、美織ちゃんも年女なんだよね。2人とも未年でひとまわり年齢が違うって。びっくりだよ。12歳年下の女の子との妖艶なラブストーリー、ってなんかもうそれだけでたまんなくならない?ごうくんかっこいいのが目に見えてるもんな。まぁごうくんはそこにいるだけでかっこいいけどな。(強火)
27日のカーテンコールでは2回さらっと手を振られただけで「ごうくんふざけんなかっこよすぎか付き合ってくれーーーーーッッッッ!!!!」ってなったから、マジあの数秒の森田剛だけで残していく破壊力のでかさが恐ろしすぎる。
29日の大千秋楽では、何回目かのカーテンコールで、たぶんスタッフさんからのサプライズでパァーーン!って金色の紙吹雪が舞って、ごうくんも美織ちゃんも原田さんも笑いながらびっくりしてた。美織ちゃんがそれで感極まって泣いちゃってどんなに可愛いんだよ美織~~(´;ω;`)って俺も泣いた。
最後カーテンコール、ごうくん1人で出てきて「ありがとうございました」と深くお辞儀、「よいお年を」と一言だけ言ってまた深くお辞儀。千秋楽なのにその一言で終わらせた森田剛マジ痺れるだろ。両手で1階にも2階にも大きく手を振ってくれて、大きく両手で3回ガッツポーズしてはけてった。言葉少ない彼らしかった。
かっけ~~~(´;ω;`)そんなのずるい~~~(´;ω;`)森田剛がかっこよくてたまらなくなるだろ~~~(´;ω;`)
なんていうか本当にさ。森田剛の舞台ってすごいんだ。観終わったときに、「すごいもの見せられたな」って思うの。これはちょっとたまんないぞ、って。
生まれ変われるなら舞台の演出家になって森田剛にオファーしたかった。森田剛と舞台の仕事をしてみたかった。舞台のこと何も知らないけど、ごうくんと舞台の仕事ができたらすごくわくわくしてゾクゾクできるんだろうなって、そんな想像ができる。
森田剛の舞台、気になるけどまだ観たことがないって人がいたら、ちょっと無理してでも行くべきだと思う。その価値は絶対にある。
また次のごうくんの舞台も楽しみでしょうがないです。
やっぱりごうくんの舞台が世界で一番好きだ~~~!!!